アッサラーム・アライクム【バングラデシュ】

なんとエネルギッシュな街であろう!

バングラデシュ、ダッカを訪れて初めての感想である。

昼夜を問わず人で溢れ、車で溢れ、すなわちエネルギーが溢れているのだ。

 

人、人、人。そして激しい渋滞。

いよいよ来たのだ、と少し気を引き締めてかからねばならぬ。

そしてこの旅初めてとなるイスラム教国だ。

 

(溢れでるエネルギーはバス車体の傷からも想像できるだろう。事故までいかないけれど、よくぶつかる。)

 

正直に言うと、バングラデシュは「おまけ」だった。

本来はミャンマーからインドに陸路で抜けてしまおうと考えていたのだけど、

政治的なあるいは治安的な理由からか、そのルートが閉ざされてしまった。

そのため、ミャンマー出国に際しては飛行機を使わざるを得なかった。

インドに向けて飛んでもよかったのだけど、陸路越境が達成できなかったことに対するちょっとした反抗心からインドは候補から除外する。

そこで白羽の矢が立ったのが、ちょうど間に位置するバングラデシュだった、ということである。

片道でおよそ2万円ほどで、少々心許ない財政状況を鑑みても悪くない金額ということも有り難かった。

 

快適とは言えないけれど、特に不満もないビーマン・バングラデシュ航空を利用してダッカに降り立ったのは19時を回った頃だった。

飛行機を降りるとき、その国の匂いが鼻をくすぐる。

その瞬間というのはちょっとしたときめきのような、軽い興奮を覚えるものだ。

ダッカはと言えば、スパイシーな、東南アジアを越えたことを実感させてくれる匂いだった。

 

宿に荷物を置いたら、晩御飯。

夜でも大いに賑わう街に警戒をしながら、定食屋に入る。

挨拶は「アッサラーム・アライクム」だ。

アラビア語圏の挨拶と同様で、一日中使える使い勝手のいい挨拶である。

ちなみに、こう言われたら「ワアライクム・ッサラーム」と返すのが正しい。

およそ7年振りの挨拶に少し感動を覚えつつ、当時の記憶が蘇るようだ。まぁいい思い出ばかりではないのだけれど。

借りた部屋に南京虫が発生したり、タクシーと五円で言い争ったりあれやこれや・・・。

ああ、素晴らしきエジプト・カイロ生活であった・・・。

余談だけど、シリアのダマスカスと合わせて約半年の留学をしていたのだ。この話はまたいつかにとっておこう。

 

バングラ飯の代表とも言えるビリヤニは、いわば炊き込みご飯のようなもの。

ここのチキンビリヤニは一緒に炊き込むのではなく、チキンとゆで卵をご飯で覆い隠すようなタイプ。

スープのようなものはカレーで、これもご飯にかけていただく。

味は相当うまいのだけど、いかんせん写真映えしないのが難点である。

カレーはミャンマーとは異なりサラサラとしたもので、空港で香ってきたものと同じスパイスなのだと思う。

 

ミャンマーと隣接しているとは言っても、全く異なる文化圏だということがよく分かる。

ミャンマーまでを東南アジア、バングラ以西を南アジアと呼べそうだ。

元々ベンガル地域としてインドの一部であったバングラデシュは、宗教こそ違えどやはり文化としてはインドと大部分が共通する。

 

人口密度が世界一であることからか、単に旅行者が非常に少ないからかは分からないが

外国人を見ると物珍しそうに視線を投げてくる。

それも、一瞥するだけではなくてじっと見続けるのだ。

そして声をかけたり写真を撮ったり、握手を求めてきたりと始まる。

スターになった気分を手軽に味わえる、と言えば聞こえばいいけれど余計な緊張感を持つことになり疲れるのも確かだ。

今後はスターを見かけたら

「お前も大変だなぁ」と思うに留めようと決めたのだった。

 

ところで、イスラム教徒にとって大切な行事の一つがラマダーン(断食)だ。

ちょうどラマダーンがあと数日で終わるというタイミングでバングラに入国とできたことは非常によかった。

非イスラム教徒である僕には関係がないのだけど、やはり日中に外で堂々と飲食するのは気が引ける。

そして、ラマダーンの終わりは言わば年末年始で大いに盛り上がる。

 

ラマダーン最終日は、明けの最初の食事・イフタールを彼らと一緒に食べることにした。

日没前に入店して、注文。目の前に料理は運ばれるけれど誰も手をつけない。

日が落ちかけると、そこから先はチキンレースだ。

自分が最初に食べるのはなんだか気が進まないのだろうか、もう食べても良いものかと周囲を伺っている。

やはりというか、写真映えはしない。

 

年末年始、と言ったようにラマダーン明けは帰省ラッシュが激しい。

皆、ダッカから故郷へと帰っていくのだ。しかし、この時期の乗車率は日本の満員電車を越えてくるのではないか。

なにせ、車内だけでなく列車の屋根にまで乗るのだ。

チケットを持たない乗客が我先にと屋根へと上る様は、一つの観光スポットとして捉えてもいいのかもしれない。

そこには地元のニュース番組のクルー、そしてバングラのネイマール。

 

 

 

ああいけない、ダッカについて書くとまとまる気が全くしない。

歩いているだけで何人もの相手をしなければならないことも勿論あるが、

人々の活気に当てられて、こちらもかなりのエネルギーを必要としてしまう。

結果として、強い印象が残りやすい。

ダッカはそんな街だ。

 

ミャンマーではのんびりとしていられたけれど、それはここでは難しそうである。

だけど、それもまた面白いじゃないかと思う。まとまらなくてもいいのだ。ダッカはそれでいいのだ。

しばらくはスター気分を味わってやろう。

そんな気持ちと一緒に、僕はダッカの喧騒に飲み込まれていった。

 

 

その他の写真はInstagramをごらんください。

 

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